◇Dear セルフライナーノーツ

2013年10月13日の第九回東方紅楼夢にて頒布したアルバムDearを手に取って頂きありがとうございます。
このテキストはDearを僕の視点で紐解くセルフライナーノーツです。
相も変わらずぐだぐだと作ったときの気持ちや抱いてることをだらだら書き記しているだけなのですが、Dearの空気により深く浸りたいという方にオススメします。

っていうか読みにくいねこれね。なんかしら上手いことやります。そのうち。



0.Dear

#Image
手紙 という一貫したテーマがこのCDにはあります。
このアルバムを作るまで、いろいろな出来事があったんですが、最終的に過去から未来への手紙というような構想がまとまり
デザインでも楽曲でも手紙という言葉が大事なキーワードになりました。
そんなキーワードがあり、歌詞カードを逆封入にしてみたりと、そんなCDになりました。
そういえば最初はアルバムタイトルがLetterで、1曲目がDearという名前になる予定でしたが、いろいろと思うところがあり逆になりました。

手紙とはいうものの、宛て先はなく ただただ遠くに。
そのうち誰かに届けば良いな。返事は別に要らないけども、忘れた頃に思い出す。そんな感じの。

リテイクだったり昔の曲を経て もっとその先へ先へ、という気持ちがとても強かったなあと思います。

当時いろいろと精神状態が悪いタイミングに重なったりしていて、なんとなく現状への不満や、閉塞感にみちてました。
なんとか脱却したかったのかな、とか今になると感じるところもあったり。
そんないろいろなものが詰まったこのアルバムは楽曲的にも新しい方向を開くことができたなーって気持ちもあるんですが、方向転換しすぎてどんなふうに捉えてもらえるかな、って不安になるところもあったなと。

しかし何よりこのCDはデザインがよかった。本当に。
前作からのあねこさんと組んでデザイン面をすべて任せてますが、もうこの人でなければって感じです。
僕はこの人の絵の表情がすごく好きで。すごくシンプルなデザインが生きるなーと思います。
あとはしっかり文字を読ませるデザインをしてくれる。そういったところがすごく嬉しいです。



1.Letter

#Arrange
一曲目に相応しき キレイめなぽつぽつとしたピアノと歌だけで始まる曲ですね。
ピアノを弾いてるのはライブでもお馴染み腐れ縁の岸本さん。僕の家に遊びに来てるときに録りました。
割とこういう曲調は狙って作る感じの、なんとなくお得意な感じの曲調です。
少年ヴィヴィッドってこういう曲のイメージが強いのかな、って意識があるので、合同とか呼ばれるとこういう曲を作ろうとします。
手紙とか、文字にまつわるものって書き出しにものすごく迷うんですよ。
ぽつりぽつり書き出すとだんだん筆が乗って来てふわーっといけるんですが。
意図せずこの曲はそんな感じの、だんだんと盛り上がっていくような曲になったなって気がします。お気に入りです。

#Lyric
例外もあるかと思われますが、僕らは声っていうものを持っていて、それで意思疎通を図ったり何かを紡いだりします。
そのやり取りだとか、紡いだものっていうのは形を持ってなくて、僕らがふと忘れてしまえば二度と取り返せなくなる凄く儚いもので。
そういったものをこの手が描く線と弧で書きとめよう。今生れ落ちたこの感情にも名前を付けて紡いでみせるよ。

実はこの歌詞一回まるっと没になって書き直したんです。
最初の歌詞は凄く女の子っぽくてデザインののあねこさんに指摘され 僕も納得いかず書き直してこの歌詞になりました。



2.ソラ

#Arrange
ああ懐かしき僕の同人デビュー作品のCDに収録されている楽曲の再録。
最初にこれを作ったときは19歳だったね 若かった
けれど意外とあの頃のシンプルさって今取り戻すのものすごく難しくて。
いろいろ当時のアレンジより難しくしてみたけれど、あんまりいじらないほうがよかったのかもしれない。
個人的には2A前のギターが左右で掛け合ってるところだとか、2Bのギターとか、その辺が気に入ってます。

#Lyrics
この頃の歌詞はとってもストレートなので、特に多く語ることも無いかなーと思っている次第です。
強いて言えば、あまりに音の収まり的に気持ち悪かったところとか、表現が恥ずかしいところとか、割と書き直してたりします。
でもやっぱりあの頃のストレートな感じって今やれないなあ。シンプル以外の選択肢を知ってしまうと、シンプルにまとめるの怖いです。
あとはまあ、歌詞は雰囲気が伝わればいいものだと思っているので、そんな感じの心境もあるので、今と昔の歌詞は違うのかもしれないですね。



3.SIGHT

#Arrange
これも懐かしい。前身サークル空ノ調べのPaindully Sad Fantasyっていうアルバムからの再録です。
この曲は少年ヴィヴィッドになってからもライブでよくやってますので、割と長い付き合いの曲です。
結構BPMも早くて勢いでがーっとやれるので結構重宝してました。Bメロの崩し方がだいぶ気に入ってます。すごくおいしい感じになったなと。
この曲はほとんどアレンジもいじってなくて、結構当時のままの勢いでがつがつ録音しました。
そういえば歌もほぼ一発で録ったかなあ。
エモい曲に結構な憧れがありますねー。がつっと行くけどヴォーカルはキレイに歌い上げる感じの。

この原曲にはやたら「うわあああ」ってパニックになっていってサビでなんか限界超えちゃって脳内麻薬ダバーして「早すぎてスローに見えるぜ!」みたいなイメージがあるんですが
当時のイチさんはそれを表現しようとBPMをやたら上げて音数詰め込んだみたいで 老いたイチさんはギター録るとき早すぎてパニックになりました。うわああああ!

#Lyrics
この歌詞を書いた時、すっげえ疲れてたのかなんだかよくわからないんですが、変な夢を見たんです。
どこまでも白黒で閉塞感のある、際限なく広い部屋に閉じ込められて、笑い声だけがただただ聞こえる感じの。
なんか三角形とか四角形とか、やけに直線的なオブジェや階段があるんですが、近づいても近づけないし離れようとするとものすごい迫ってくるし。
笑い声は止まらんし、なんなんだよもう!やめてくれよ!ってなって目が覚めて、よく考えたら面白かったのでそのまま歌詞にしました。
なので特にメッセージ性があるわけでもなく、その夢を題材にただただ歌ってます。
曖昧な感じで描き表したかった。どうぞ聴いたままに受け取ってください。



4.ヒナギク

#Arrange
これもSIGHTと同じアルバムからの再録。隠れた人気曲でした。僕もお気に入りです。
この曲は当時すごくさっくり作れた記憶があるなあ。1時間くらいで全部作った気がします。
意外とこうやってあーでもないこーでもない、もっと難しい構成を、もっと練りに練った楽曲を、とか深く考え込まずに出てきたものをさっくり録音したほうが良いものできたりするんだねって教訓になった一曲です。
個人的には、造花だったりLetterだったり、キレイめな楽曲のルーツみたいな意識があります。そんなことないか。

#Lyrics
喫茶店でコーヒー一杯頼んで窓際の席でぼけーと道行く人を眺めてるのが凄く好きで。
ふと見つけた人が笑ってなくて無表情ですたすたと。それが当たり前かもしれないが。なぜかそれが雲行きの悪さと相まって暗いなぁーと印象的で。
そんな悲しい顔はやめて お願いもっと もっと 笑ってよ。っていうフレーズに集約されてそうな感じがしますが、橙には凄く天真爛漫な良い子イメージがありまして。
たぶん物語っぽく仕立てるならば、そういう笑顔を振りまく役どころなんだろうなあって思い歌詞を書いた気がします。



5.蜃気楼

#Arrange
東方で一番やったシリーズって緋想天・非想天則で。衣玖使ってたんですよ。
なのでいつかこの曲をやりたいなと思って長いこと経ったんですが、ふとメロが浮かんでこれだなって感じで。やれてよかったな。
僕が思う少年ヴィヴィッドっぽい曲調って割とこんな感じで。仄かな暗さのオケと切なさ含んだメロ。そんなあれです。
こういう曲を雰囲気を持たせたままライブで表現できるとすごくかっこいいんじゃないかなーと思います。
この曲に限らず、Dear収録の新曲はどれも空気感というか、楽曲の世界がすごく強くて、すごく浸れるなーと自画自賛するする次第です。

#Lyrics
分厚い雲に覆われてる空間のイメージ。常に曇ってる。特に雨が降るわけでもなくただただ雲。
その雲は光を通さないので、そこにいる人たちは光の差す生活を忘れています。
というような情景ではあるんだけど、そんな情景と結びつく、自分のものすごい閉塞感を歌っています。
たぶん2013年の僕はやるべきこともなく、職もなく、やりたいこともなく、すごいネガティブになってたんでしょうね。
そんな閉塞感のイメージが、僕の中では曇り空な感じ。

じゃあ曇天とかそんなタイトルでいいじゃないすか。なぜ蜃気楼という題をつけたのか。 
たとえばなんだろう、雲の切れ間みたいな。アレを広げたら青い空が見えるし光も返ってくるよ!っていう。そういう可能性があったとして。
なんか結局そういう切り口が見つかっても、お前には無理だわ、だとか周囲の反対だったりいわゆる常識とか世間体が邪魔して、葛藤してるうちに幻のように無かったことになりますね。みたいな。
そういう要素を振り切ってまで、それを無理やりこじ開けるだけの勇気がなかったので、きっと鎖に繋がれたままなんですよねー。
そういうクソみたいな鎖振り切りたいねっていう。そんなあれ。

息を止めて飛び込んだ人がその後どうなったのかは知らない。



6.夕凪モノクローム

#Arrange
Pieces収録のフォーカスライト Little Stories収録のusotsukiに続く変な曲枠。なんかしらひねくれた曲を一つは入れたくなります。
そういう曲は総じてメロがすごく気に入ってます。すごく。すごく。これなんかも会心の出来だと思います。
この曲もメロとコードがばーっと出てきて、曲をどうしようかものすごく迷ったんですよね。
散々迷って、僕の好きな70〜80年代の洋楽の古臭い感じをなんとなく意識した、あんまり無さそうな変な雰囲気の曲に仕上げました。
音数が少なくてものすごくシンプルにまとまりましたが、逆にそれが変な雰囲気に一役買ってよかったのかもしれない。

やたら複雑なベースは打ち込みです。岸本がやりました。
この曲はピアノの岸本の家でいろいろ教えてもらいながら作ったなあ。そういえば。夏の暑い日でね。終わった後焼肉食べたっけ。懐かしい。

#Lyrics
どうやら僕は自分がそうだからかもしれませんが、やたらと見たくないものから目を逸らす傾向があります。
そうやって見たくないものから目を逸らし続けて、思い出の中に残る憧れの景色を追い続けた結果、色というものを忘れてしまうお話です。
僕の中の色彩というか、色鮮やかの象徴になる自然現象って虹なんですが、そういう意識もあって色に憧れる話を書くときは虹がかなりの頻度で出てきます。
だからたぶん虹がみたかったんだと思います。これからも無色の虹を見ながら夕凪に染まる街でこの人は生きていきます。



7.瓶詰の街

#Arrange
下にも書いてるように、構想自体はだいぶ前からあった曲なんですが、自分の編曲能力の無さ故にお蔵入りしてました。
これも夕凪モノクロームと同じ日に岸本の家で岸本と一緒に録りました。シンセサイザー教えてもらいながら。
しかしものすごく世界を持った曲になったなあ。これ。すっごい気に入ってるんですよ。ライブでやれないかなあ。
ピアノがめっちゃいい仕事してます。アウトロのコード進行がすごくね。F#mがメジャーになるところとかね。どうだおいしいだろうって感じです。

#Lyrics
エソテリアってどんなところにあるんだろう。地底都市というくらいだからきっと瓶の底みたいなところなんだろう。
そこはきっと息苦しくて人工的な建造物が立ち並び、見上げるて圧迫感を感じながらもそこにいるのだろう。
そこには人もたくさんいるだろう。その中に自分もいるかもしれない。
街を行き交うのは画一化された思想であったり、何度も耳にした流行歌であったり、意味のない罵声であったり。常に言葉の雨が降り続けている。
僕はそれにまみれて自分を見失いつつあるのかもしれない。
もしかしたらその雨の中に正解が混じってるかもしれないし、言葉の雨はいつか止んで虹がかかるかもしれません。
傘を差すというのはある種の防衛行動なんでしょう。自分を見失わないための。

なんて感じの。曲自体はLittle Storiesを作っている頃からあったけど、構成とかシンセサイザーがいまいち上手くいかずお蔵入り。
ブログの記事とかを参照してもらえるとわかると思うんですが2013年例大祭でセルフカバーアルバムを出そうとしてたんですよ。
その名残がソラ、SIGHT、ヒナギクなんですが、それを出そうと考える前はこの曲のシングルか、この曲を収録したミニアルバム規模のCDを作ろうと思ってた。
歌詞のメモを書いたときはたぶん3月とかその辺で、僕はその頃実家のぐちゃぐちゃした問題や、諸々の問題で精神状態があまりよくありませんでした。
っていう曲。言葉の雨。そういえば言葉の雨って意識してなかったけどDearのキャッチコピーだったね。気持ち的にはLetterと対なのかも知れない。



8.SECOND HAND

#Arrange
この曲は他の曲たちに先駆けて1211、じゃねっと亭、少年ヴィヴィッドで出した隣り合わせの憧憬っていうCDに収録されてます。
そちらでは僕じゃなくてななせさんが歌っててね。そっちもよろしければ聞いてみてね。シンセとか大幅に変更してるでな。
Dearに収録されてるのが大本というか、原型というか、いやどっちが原型だろう。わからないな。
作ってる段階では頭の中では自分の声で鳴ってるもので、なんかそんな感じの、より思い浮かんだ状態に近いバージョンというか。
どっちがいい悪いじゃなくてね。僕のバージョンということで。

この曲の編曲しなおしはLetterと同じ日にやりました。岸本が我が家に遊びに来てた日。
シンセサイザーとか自分の作曲環境で使うならどんな感じでやればいいのだろう、と岸本に実際に操作してもらって教えてもらいながらやりました。

余談なんですがこの原曲すごい好きなんですよ。車椅子の未来宇宙。秘封の曲は素晴らしいけどメロや展開がはっきりしててアレンジ難しくてね。
でもやれてよかったなーと思います。

#Lyrics
歌詞は造花でもお馴染みの<echo>PROJECTのあおまさんです。
この人は僕の声に合わせた単語を選んで歌詞を書いてくれるので凄い。
例えば、僕割と鼻で抜く言葉、例えば「ん」とか、語尾で息を抜いたり、なんかそんな感じの歌い方のクセがあって。
そういうのをおいしく思って入れてみてくれたりね。文字っていう媒体でもきれいなんだけど、音にしても旨みがある歌詞を書く方です。
この曲に関しては本当に指定とか無くて、強いて言えば蓮子寄りの曲だよ、と伝えただけでした。